デジタルカメラにおけるワークフローを考える

デジタルのメリット・デメリット

一眼レフタイプのデジタルカメラが比較的安価になり、少し無理をすれば誰でもが入手できるようになって数年が経過しています。
これからデジタルカメラを購入しようとかデジタルへの移行を考えている…なんて言う相談をカメラマン仲間からされたりもしています。

我々は、生業として写真に携わっている訳で、趣味の世界とは少し異なる事を予め断っておきますが、
業種としての特性上(すなわち商売として)費用対効果を考える事は不可避な訳です。
それを踏まえた上でメリットと考えられる事、デメリットと考えられる事を述べてみたいと思います。

カメラとしての機能についてフィルムカメラとの差は大きくなく、既に完成されたと行っても過言ではないと思われる訳です。

ではデジタルカメラの特性でメリットと成り得る点は何でしょう?
感材費・現像代の削減?・・・確かにそうですね。
36枚撮りのリバーサルフィルムを購入して現像すると、1本当たり およそ 1,500 円程度かかります。
デジタル化すれば、これらの経費は無くなる訳ですが…
デジタルカメラ本体の価格というのは、フィルムカメラのそれと比べ随分と高額になります。
また、進歩の著しい製品であるために耐用年数(あるいは減価償却期間)を待たずして新しい機種が発表・発売されてしまいます。
しかも新機種は明らかにそれ以前のものと比べ性能が上がっている事が多い訳です。
結果、感材費・外注費(現像代)の抑制が可能であってもカメラ機材までを含めたトータルコストを考えると、
決して安くなっているとは言えないし、むしろデメリットではないか?と言う状況です。

ただ、年間にどのくらい撮影するのかは各人異なると思いますが、
前出の数字から換算して考えると年間 300 本程度 撮影するようなケースだと
経済的なメリットが出てくるのではないかと考えます。(もちろんギャランティとの兼ね合いもありますが…)
実際のところ感材費はクライアント持ちだったりする事もありますから、一概にこの数字だけで判断する訳ではないですが
個人的には上記の数字が参考値になります。

でも、実際のワークフローの中でデジタル化のメリットというのは他のところにあるのではないかと考えます。

我々、商業写真に携わるカメラマンの仕事は最終的に雑誌やパンフレット、ポスターなど
印刷物として色々な方の目に触れる事になります。
これらの商業印刷物は家庭内でインクジェットプリンタを用いて印刷するのとは、
まったく別物と言って良いくらい異なっています。

デジタル以前…と言っても、DTPの時代になってからのお話。
専任のオペレーターが「超」高性能なドラムスキャナを使って
ポジフィルムをスキャニングした『データ』を印刷原稿として製版にまわしていました。
すなわち印刷に使う写真画像は、デジタルカメラが出回る前から「データ」だったのです。
(印刷における「アミ点」自体がデジタリックな物だと言う見方も出来るわけですが…)
故にデジタルカメラによる撮影は中間行程を削減し結果的に納期の短縮化やスキャニング・製版コストの低減に
寄与する事となったわけです。そしてこれがデジタルカメラ最大のメリットとなったのです。

しかし、このデジタル化のメリットは現状で必ずしもうまく機能しているとは言えない状況です。

その辺りの話は、またいずれ…。

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